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第11話
「俺のところにも警備はいるが、貴重品を置いてるわけでもないし、そんなに厳重にはしていないんだ。すごいのは政治家の別荘だな、近寄るだけでレーザービームでやられちまうぞ」
戯けて両手をあげる。
「いいからちゃんと運転しろよ!」
思わずハンドルを握ってしまった。それを見て笑ってる。
「心配すんな、運転はうまいほうさ」
「そういう問題じゃねぇ!」
日本にいるバカ後輩を思い出す。
せっかく離れた土地に来たのに、似たようなバカがそばにいようとは。
ため息を吐くと、突然視界が開けた。
海だ。
「うわ……!」
真っ青な海。沖縄で見た海に似てる。
淡いエメラルドグリーンが沖まで満ちて、空の青と混ざり合って水平線がどこなのかわからないほどだった。
「すっげぇ」
日本語で呟く。この時、デジカメもキャリーの中だったことを思い出す。もう記憶のカメラに刻みつけるしかない。
「こんな海は序の口さ。プライベートビーチがあるのが当たり前だぞ」
運転手は得意げだ。
「泳いでも寛いでも誰に気兼ねすることもない」
「あんたの別荘にもあんの?」
「もちろんだ、あまり利用しないけどな。プールがあるから」
「プール」
それもいいな。南の島で海やプールなんて、本当に贅沢な話だ。
「もうすぐ到着だ、ゆっくりしてくれ」
海が見えたあたりから、明らかに周囲の景色が変わってきた。
道の舗装がされ、高い壁の家が増えてきた。
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