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第15話
「だから、好きな部屋を使ってくれ。毎日違う部屋を使ってくれても構わない。ハウスキーピングは毎日入れるからな」
そして彼は得意げに笑った。
想像の斜め上をいく世界観に、完全に頭がついて行かない。
あれ、俺死んだ?
ここ天国?
いつものバーでバカ後輩と飲んでたのが、遠い昔のことみたいに感じる。
「たっぷり話そうぜ、いろんなことを。お前のことを知りたい。俺はあの日から、ずっとお前のことを探してたんだ。また出会えて嬉しいよ。来てくれて本当にありがとう、感謝する」
真面目なトーンの声を感じて、口を開いたまま彼の顔を見た。
ほんの少し視線を挙げた先。
慈しみの目というのだろうか、俺以外のものを何も見ていない状態の目で、じっと見つめられていた。
赤の他人にこんな目で見られたことはない。
歴代の彼女からも、見られたことはないかもしれない。
柄にもなくドキッとした。
「まぁ、とりあえず酒でも飲まないか?ビールもワインもウイスキーも、なんでも揃えておいたからな!」
けど、すぐに思っ切り頬骨の上がった笑顔になるから、その時はシリアスにもならずに終わった。
「ビールがあれば十分だよ」
ちょっと戸惑ったまま答えるけど、すぐにバカンスモードに戻った。
「ビールもいろんな国のビールを集めたからな!どこの国のビールが好みか、飲み比べてみてくれ」
「えー、もうマジ普通の缶ビールとかでいいし」
さっきドキッとしたのが悔しくて、駄々っ子みたいなことを言って抗ってみる。
我ながらバカみたいだ。
もうこの際、バカでもなんでもいいけど。
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