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第34話
「よく頑張ったな。お前は何も悪くない。よく1人で耐えてきた」
穏やかな口調のまま、彼は言う。
「言いにくかったろう。ありがとう、俺に話してくれて」
そのまま、ゆっくりと俺を抱きしめてくる。
やっぱり、彼に抱きしめられても、体は違和感を訴えなかった。
「全ての痛みを消すことは出来ないと思うが、少しでも」
「わかってる、ありがとう」
撫でながら抱き返す。彼も俺の背中を撫で続けた。
自分の意思ではどうにもならなかった部分が、やっと安堵していた。
この腕の中なら怖くないと、ようやく理解した。
「落ち着いたみたいだな」
彼も気づいたみたいで、穏やかに言う。
「ありがとう、もう大丈夫」
「ならよかった」
「うん」
「出来ることなら、お前をレイプした奴を捕まえて、ぶん殴ってやりたいくらいだ」
「……うん」
「殴るだけじゃ足りないな。肉体的にも社会的にも抹殺してやりたい」
こいつの権力じゃ、やろうと思えば出来なくもないだろう。
「それじゃあ逆に捕まるぞ」
だんだん口調に怒気を帯びてきたので嗜める。
「もちろんやらないさ。性犯罪者のために俺の人生を棒に振りたくはないからな」
「そうだよ。怒ってくれるだけ嬉しいよ。ありがとな」
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