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第35話
それから、彼とは同じベッドで寄り添って眠った。時々抱きしめたり布団をかけ直してくれるのを、ちゃっかり甘えて寄り添ったり顔を埋めたりしながら。
翌朝、あんなに怯えて驚いたのが嘘みたいに、ぐっすりと眠って起き上がった。
「おはよう、大丈夫か?」
先に起きていた彼が、シェフが作り置きした朝食を温め直していた。
「あ、うん、大丈夫。昨日はごめん」
まず謝らないと、気持ちが悪かった。
多分手首がダメなんだろうな。触られるだけで、繋がれた記憶がありありと思い浮かんでくる。
(自分で触っても何ともないのに)
手首を撫りながら首をかしげる。
「どうした? 手が痛いのか?」
パンを乗せた皿を両手に持った彼が、心配そうに尋ねてくる。
「あ、ううん、そうじゃなくて」
手首のことを話すと、露骨に眉間に皺を寄せて、首をかしげた。
「うーん、なるほど。そこがスイッチになっているってことなんだな」
「多分ね。でも自分で触っても別に何ともないんだよなぁ」
「他人に触れられるのがネックなんだろうな」
食器をテーブルに置いた彼は、そのまま握手するように俺の手に触れてくる。
「……それなら、少しずつ慣らしていけばいいのかもしれない」
敏腕CEOの目が光ったように見えた。
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