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第36話
「慣らすって?」
意図が組めなくて首をかしげる。
彼は俺の手を見つめながら、手を握ってくる。
「荒療治かもしれないが、恐ろしくないということを、体に染み込ませる必要があるかもしれない」
「はぁ」
握手する体勢だったのを、くるりと手のひらを返して、俺の手の甲を上に向ける。
「嫌だったら、我慢しないで言ってくれ」
そのまま、俺の手の甲に唇を寄せる。
かと思いきや、彼が唇を落としたのは、手首の上だった。
「っ!」
体が大きく震える。
けれど、昨夜ほどではない。
「怖いか?」
すぐに尋ねられた。
「いや、そんなに……」
怖くない訳ではないけれど、耐えられないほどではない。
「なら、これで少しずつ慣らしたらどうだ? 俺が手首にキスをするから、それが大丈夫になれば、少しは克服できるかもしれない」
克服できれば、普段の生活にも困ることはないだろうし、とも言う。
「うん、まぁそうだよ、な」
いつまでもトラウマ抱えてるわけにはいかないし。
キスされた手首を撫でる。
とはいえ。
(そんな簡単にいくのかね)
訝しい気持ちの方が強かった。
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