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第38話
「せっかくバカンスに来てるのに、何浮かない顔してるのぉ?」
シェフは何も知らないから、相変わらずご機嫌麗しく、今日も爽やかなハニカミ笑顔を向けて来る。
「いろいろあったんだよ」
シェフお手製のオリジナルカクテルを飲みながら、カウンターに突っ伏す。
グラスホッパーを辛くしたような感じで、結構俺好みの味。お代わりを促されて、遠慮なくもう一杯拝借した。
「もしかして、腰が立たないくらい抱かれたとか?」
何にも言ってないのに、びっくりした顔をして言う。爽やかな顔してサラッとエグいこと言うのね。
「んなわけないじゃん!そういうのじゃなくて」
「じゃなくて何よぉ~」
「うーん、まぁ、ほら」
どこから何を話したらいいんだ。
それだけでウンウン唸ってしまったところを、お腹痛いの?と心配された。
「あのさぁ、ちょっとワケあって、最近手首にキスされてんのね」
いろいろと割愛して、要点だけ絞る。
不思議そうな顔をしてたけど、とりあえず飲み込んでくれた。
「手首ね? それがどうかしたの?」
「仕方ないんだけど、俺手首にキスされんのあんま好きじゃないのね」
「そうなの?」
「そうなの。どうしたらやめてくれっかなって」
ふーん、と相槌を打つ。
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