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第67話
三日月は海の方を向いた建物の上にあって、テラスの柵を背にするとちょうど屋根の真上に見えた。
海の上には星が見える。天体には全く詳しくないからわからないけど、もしかしてこれが天の川だろうかと思うほど細かくて白い星の太い筋が、夜空を真っ二つに割っていた。
「マジ最高。酒美味いし」
夜の景色を眺めながらビールを飲むのが、ここでの日課になっていた。
幸いにして、1日も曇ることも雨が降ることもなく過ごすことが出来ていた。
特に今日は風もなくて、いつまでもここにいられるほど心地いい。
風呂にも入って、あとは寝るばかり。
使ってる部屋は、初日から変わってない。慣れもあったけど、シンプルな部屋はこの別荘の風景を一番満喫できることに気づいたから。おかげで毎日快眠だった。
ぼんやりとテラスから部屋の中を眺めていると、部屋のベルが鳴ったのが聞こえた。
「はーい」
テラスから声を張り上げる。ここには彼しかいないから、どんだけ大きい声出したって構わない。
部屋に来た彼は、氷入りのグラスを2つ持ってこっちにやって来た。
「飲もうぜ」
彼はほとんど毎日、こうしてやってくる。来ない時もあるけど、多分仕事してるんだと思う。
来ない時寂しいかと言われれば、まぁ正直寂しいよね。
「ロックは行けるか?」
それだけ言われても、なに持って来たのかわからないし。
「何ソレ?」
暗いから余計にわからない。
「70年モノのウイスキーさ」
俺の隣に寄りかかって笑った。
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