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第72話
ベッドの上の景色は、トラウマで怯えた時の景色と何も変わっていなかった。けれど今は怖くも何ともない。
ただベッドに横たえられたまま、彼の胸にすがって体を撫でられる感触に身をまかせた。
「触るだけで興奮してくる」
熱い息を吐きながら囁いてくる。一緒に横になって、見つめ合いながら時折キスを交わしたりして。
興奮してるのは俺も同じなのに、この場所の柔らかい雰囲気にのまれてか、あまり急く気分にはならなかった。
「何でだろうね」
彼の顎に軽くキスをする。
「俺も、すげぇドキドキしてる」
彼が触れてくるたび、その場所に熱さとむず痒さを感じる。
彼が体勢を変えて、俺の上に覆いかぶさってくる。四つん這いの体勢で、俺の体を見下ろす。
「興奮してくれて嬉しいよ」
そう言って笑う。
股間が痛い。パンツを履いてるのが本当に邪魔くさい。脱いでいいか聞くより先に、彼が俺の下着に手をかける。軽く腰を浮かせて、脱がされるのを手伝う。
こうなると上も脱ぎたくなって、Tシャツは自分で無理矢理脱いだ。
「あんたも脱いで」
ちゃんと触れたい。彼の体に触れたくて仕方がない。
彼は一気に服を脱ぎ、俺の着てたものと共にベッドの下に放り投げた。
ベッドの上には、俺と彼の体、静かな海の波の音だけ。
ベッドサイドのぼんぼりの灯りが、優しく照らしてくれている。
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