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第82話

「本当に良くなったんだな」 唇を離した彼が、うっとりと呟く。 「安心した」 感慨深そう。息を荒げたまま、ゆっくり体を離して正面で向き合う。 「うん、もう大丈夫。ありがとう」 軽く会釈しながらお礼を言って、そのまま抱きついた。お互いに汗だくで、触れ合うだけで彼の香りが増した。 彼を安心させられたことが一番嬉しい。気持ちがちゃんと伝わったんだなって思えて。 それにしても、俺に比べたらホントにゴツいなコイツ。 膝立ちで抱きついて首に腕を回すと、そのまま腰を抱きしめられる。 「ホントに細いな。腰なんか折れそうだ」 誰かにも言われたなそんなこと。 「折れねーよ」 同じ言葉で返すと、彼は背中を撫でながら笑うのだった。 「まぁ、折れないように支えてやるさ」 「……」 「守ってやる」 「……あんたさぁ」 ホントにバカだ。 もっと甘えたくなっちゃうじゃん。 「じゃあ絶対守って。もう変な奴が近寄ってこないように、ちゃんと守って」 痛いくらいに抱きつきながら返した。 肉体的には1つも効果なさそうだけど、メンタルには効いたみたい。 「ああ、必ず守ってやる。お前を傷つけるもの全てから守ってやるさ」 少し緊張したみたいな声色だった。 シラフで聞いたら歯が浮きそうなセリフなのに、素直に受け止めた。ホントに守ってくれるんだろうなって思えた。 彼と繋がりたい。 体の奥が疼く。 すっかり緩くなったケツの穴まで疼いてきて、自然と腰が揺れた。 「ねぇ、もう欲しい」 喘ぎ声をそのまま話し声にしたような、我ながら艶っぽい声で、彼の耳に囁いていた。

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