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第89話
「好き、好きだよ」
喘ぎ声の隙間で、夢中で伝えた。こんなに人に想いを伝えたことはない。
しがみつく合間に、彼は応えるようにキスを繰り返してきた。
「ハニー、世界で一番綺麗だぜ、愛してる」
彼の声も、心なしか艶っぽい。彼の太さが心地よくて、体の内側から愛される感じがする。
ホントに好きな人と繋がるって、こんなに気持ちいいもんなんだな。この歳になるまで、全然知らなかった。
彼の筋肉に沿って流れてくる汗を、全身で受け止めた。
彼の腰の動きが、少しずつ早くなる。
「すまない、俺ももう我慢が保たないかもしれない」
断りを入れられるけど、そんなこと一向に構わない。むしろ大歓迎。彼が俺に夢中になるのがたまらなく嬉しい。
「うん、来て…」
少し熱っぽく囁く。
どんどん俺に酔えばいい。
彼を求める気持ちが高まって、自分でも歯止めがきかなくなってきてる。
「愛してる」
ちゃんと言葉にしてから、彼の名前を囁いた。
「愛してるよ」
そして微笑む。
数十センチ先にある彼の顔が赤らんで、耳まで真っ赤にしている。
思えば初めてだな、名前呼んだの。
こんな時に言うことじゃないかもしれないけど。
「ちょっと待て…」
ホントに照れたみたいで、顔を真っ赤にしたまま、繋がった体勢から極力俺から遠ざかろうと体を起こす。
「何で離れんだよ」
腕を引っ張って、間近に顔を寄せた。ちょっと彼を追い詰めた気分。
少し笑って、唇を重ねた。
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