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Ⅰ【荒城の月】 第6話
色のない静寂
湖水が奏でる波は、音もなく……
闇を偲 ばせる。
「……アキヒト……いま、なんて?」
「統帥はプロポーズの言葉を、二度も言わせるんですか?」
琥珀の瞳に、柔らかな光を映している。
それは月なのか……
彼の真意なのか……
「そうじゃないッ。意味は理解している」
「では、お返事をいただけますか」
「だから、そうじゃなくって!……お前の気持ちが分からない」
『番 』になるとは、伴侶として生涯を捧げる事だ。
「統帥って戦争の策略は切れるのに、こういうのは鈍いですね♪」
フフっ、と。声を立てて笑うものだから。
「バカにしてるのか」
売り言葉に買い言葉だ。
「真剣ですよ、俺は」
月の光が燃えている……
琥珀の眼差しに、鼓動を絡めとられてしまった。
「俺はβです。Ωのあなたを、愛しています」
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