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Ⅱ【ローエングリン】 第4話

切り離された四枚羽が飛ぶ。 (狙うはα 鶴翼の陣 左翼) 翼をもぎ取るぞ。 虚ろに輝く半月の下 柘榴色の羽が、四つの軌跡を描いた。 離脱した羽が回転し《タンホイザー》左翼上空で制止する。 (俺に気づいたか) 《憾》が《タンホイザー》を叩き落とすと同時に、空を蹴った。 急旋回し、最早(たい)を為さない右翼後方に回り込む。 ビームサーベルが蒼い射光を放った。 赤い火が割れて《タンホイザー》が墜落する。辛うじて空中に残った《タンホイザー》が左翼に撤退する。 右翼《タンホイザー》には二つの道しかない。 《憾》に斬られて落ちるか 左翼に後退するか 命が惜しければ、選ぶ選択肢は後者だ。 (だがな……) お前たちの命を残してやる気はない。 摘み取るのが、戦争だからだ! 紙一重でビームサーベルをかわした《タンホイザー》が左翼に追い込まれる。 (いいぞ!アキヒト) 右翼と左翼が完全に合流した。 「射程圏内に入った」 カウントダウン 3 2 1 「《盃ノ陰》発射」 四つの羽が照射したレーザーが、軌跡を描いた。 レーザーとレーザーがぶつかり、反射し、幾何学紋様を形成する。 さながら結界のようだ。 一機 二機 三機 《タンホイザー》が失墜する。 己が機体になにが起きたかも分からぬままに。 (()ちてゆけ) 空中を自在に駆け巡るレーザーに撃たれ、装甲を焼かれ、α軍ジェネラルが爆破する。 「《盃の陰》最大出力!」 光が膨張する。 飲み込め! 羽が(イズ)ル火が堕ちる なみなみ注げ! 光の大杯よりこぼれ堕ちる火を 「飲み込んで消えろ!!」 α共! 柘榴が燃える。 四枚の羽が光の柱を照射した。 噴き上がる怒号が大地を堕とす。 跡形もなく…… 光は命を摘み取る。 「………これは戦争だ」 (おび)えろ 平伏せ 恐怖しろ 破壊しか産まない戦争だ。 戦争してまでも! 奪いたいのだ。 自由を 築きたいのだ。 平穏を 踏み出した道は、後戻りできない。 逃げ道もない。 ………………それが戦争を起こした責任だ。 毒に侵されてでも進んでやる。 こんな世界、壊してやる! 戦争という毒など、お前たちが蔓延(まんえん)させた中毒に比べればヌルイ。 α! お前たちは、俺たちに、なにをしてくれたんだ。なぁ? 答えられるか? 答えられねぇよな。 虐げて、凶悪な法律で正当化っていう暴力を振るっておきながら。 見て見ぬフリという、中毒を()き散らして。 生きられると思うなよ

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