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Ⅳ【捌里】第13話
こわい……
自分が、自分でなくなってしまう。
快楽が俺の意識を連れ去る。
俺がなくなってしまうっ。
頬の手が、こぼれた涙を拭った。
「ナツキはナツキだ。俺が抱きしめているから……もっと気持ちよくなっていいんだよ」
重い腕を背中に回して、ユキトにしがみつく。
鍛えられた滑らかな肌に、汗がにじんで……ユキト、もしかして興奮してるのか?
(あっ)
脚の付け根の固いモノ……当たった。
ユキトの……大きくなっている。
ユキトが俺で悦んでくれてる。
トクンっ
下半身がじんっと痺れて、怒張した昂りが蜜を垂らした。
嬉しくって、股の間の熱い肉がドクドクする。
(ユキトも……このままじゃ苦しいよな)
ユキトの熱に手を伸ばす。……が。
「自分の快楽に集中しろよ」
手を握られて、制止されてしまう。
「優しくさせて……って言っただろ。トロトロに溶かしてあげるから」
潤んだ目で抗議するけれど、呆気なく淫らな歓喜に飲み込まれた。
カリっ
胸の突起を甘噛みされて、背中がのけ反る。
左胸の実
吸って、しゃぶられて、唾液でクチュクチュ、ベトベトにされて、もぎ取られそうなくらい吸いつかれて……ハァウっ。
嬌声の代わりに、せわしない息遣いが漏れる。
「メスの顔になったな」
ペロリ
背筋が震えた。
赤く熟れた実に、舌が這う。
「ナツキは、俺だけの可愛いメスだよ」
(アウっ)
やめてっ!
強引な腕に、脚を大きく割り開かれてた。
脚と脚の間の……グチョグチョにいきり立つ肉塊の場所に、顔を埋めようとするものだからっ。
やめッ!
…………………………あっ。
どうしようっ、俺っ………
体をひねって抵抗した拍子に、俺の……昂りがユキトの頬に……当たってしまった。
(どうしよう……)
図らずも。
勃起した熱棒で、ユキトの頬をはたいてしまって……
秀麗な顔が、欲のミルクで汚れている。
(俺っ)
「メスなのに、雄の本能が出ちゃった?」
頬に付着した粘液を拭わず、ブラックダイヤの眼が不敵な笑みを湛 えている。
ペチンと叩いた元凶の俺の肉棒を手にとって、先端に口づけた。
赤い舌が集中的に、蜜まみれの先っぽを舐め回す。
「いいんだよ、ナツキの好きにして」
囚われの肉棒を、頬に擦りつける。
「ナツキは早漏なんだから、今の内にいっぱい楽しまないと」
チュッ
鈴口にキスして、竿に頬擦りした。
俺を射貫く怜悧な黒瞳
先走りの白濁まみれの頬が、ベトベトだ。
俺の……で、ユキトのきれいな顔を汚してる。
扇情的な背徳で、限界まで大きく膨らんだ肉欲がドクドク蜜を垂らしている。
(俺っ、早くなんかないっ)
でも、もう!
(熱がはぜそう)
イクぅッ!
「ナツキの熱を感じるよ、堪え性のない欲も」
(アァっ、イかせて!)
ユキト、イかせてっ!
声さえ出れば伝えられるのに。
熱い吐息が虚空を切るばかりだ。
ハアッハァッハアッ
固く膨張した怒張で、ユキトの頬をペチペチ叩く。
(ダメぇっ……こんなんじゃ、全然イけないィーっ!)
「早漏なナツキには、もう無理?」
こくこく、うなずいた。
もう限界………俺っ、そーろぅだからァッ!
イかせてっ!ユキトぉ!
涙でにじんだ視界を舌が拭う。
「……じゃあ。俺のお願い、聞いてくれる?」
(なに?イかせてくれるなら、何でもするからァ)
「俺の名前、呼んで」
…………ユ、キ、ト
声にならない息で
唇の形だけで、名前を呼んだ。
「愛してるよ……ナツキ」
脚を抱えられて、肩に担がれて。
下半身の中心で主張する熱欲を、奥まで咥えられた。
(アアァァァアアアーッ!)
のぼってくるっ。
根元から一気に、クルっ。
口をパクパクして、酸素を必死に掴む。
腰が跳ねて、汗が飛び散って。
イクっ、イクっ!
腰から下が快感に支配される。
ピクピク、右足の大腿からつま先が痙攣した。
お汁っ、出るゥゥゥーっ!!
意識が真っ白になった。
ユキトの口の中で、溜まった熱が弾けた。
ビュク、ビュクンーッ!
断続的に放出する粘液を、ユキトが口で全部受け止める。
「がんばったね……ナツキ」
ねちょねちょの口が、ミルクを出して萎えた竿の裏側の袋に、チュパァーと吸いつく。
ビクンっ。と、震えた内腿を掌が撫でた。
「いっぱい出たね。……美味しいよ」
ゴクリと飲み干した喉が動いた。
陰毛を引っ張られて、否が応にも見てしまう。
俺の脚を割り開く、彼の美しいブラックダイヤの双眸と……
俺の欲で汚れた、濡れた唇
意識が暗転した。
おやすみ………
声が、遠くで聞こえた気がする………
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