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Ⅴ【マルク】第14話
第4次オオキ改造内閣 副総理
シキ ハルオミ
(ユキトの兄がどうして、ここに……)
「ここは、兄上のような要職の方が足を踏み入れる場所ではありませんよ」
「そうかい?私は艦の総責任者だ。艦内と兵士の状況は、逐次把握しておく必要があると思うのだけどね」
特に……
「弟がご執心のΩに関しては……ね」
ズキンッ
心音が、不規則な脈で跳ねた。
(なんなんだ、この男)
無遠慮な手で心臓をひねり上げる……
プレッシャーに、俺が気圧 されているだと?
(Ω解放軍 統帥たる俺がッ)
「兄上。公私混同されては困ります」
「兄弟だから心配しているのだよ。
ずいぶん仲睦まじく見えたのは、私の気のせいかな?」
「意地の悪い事を仰る……」
爪の先で、鈴口を小さく引っ掛かれて、背中がのけ反った。
「躾 ですよ」
キスマーク……というには余りに獰猛な唇が首筋を掠めた。
噛みついた歯形が赤く、白い皮膚を染める。
「Ω政策融和派として『Ωには丁重に接しろ』との兄上の言いつけを、忠実に守ったに過ぎません」
しかしながら……
「この淫猥動物が、下半身の猥褻物を使って誘惑するもので……つい行き過ぎた真似をして、兄上の誤解を招いた事についてはお詫び申し上げます」
「なるほどね」
「αへの絶対服従・矯正プログラムとして、このΩと『子作り』を行う事を提言します。
種付けのため、Ωを俺の部屋に連れ帰っても構わないでしょうか?副総理」
「お前は都合のいい時だけ、私を『副総理』と呼ぶね」
「そんな事はありませんよ、副総理」
フッと吐息が笑んだ。
「Ωの件は善処しよう。
お前は、今から私の部屋に来てくれないか。兄の私を優先してくれるのだろう」
「お急ぎですか」
「急ぎではない。私はね……」
ユキト
「お前の忠誠心を試してるんだよ」
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