104 / 288
Ⅴ【マルク】第26.5話 前編(おまけ+)
*《おまけ+》*
- Ich liebe dein denken . (お前の思考を愛している) 〔前編〕-
「暴れるな!」
暴れるわ!
お前は間違っているぞ、ユキト
……俺は、名もなきΩ
しかし、その正体は……
Ω解放軍 統帥 銀の叛逆者
全てのΩが臣従する、この俺が………
(どうしてスッポンポンで、お姫様抱っこされねばならんのだァァッ!!)
ユキト、思い直せ。
今なら、まだ間に合う。
引き返せるぞ。
否
引き返せ!
そもそも、お前はなぜ俺をスッポンポンのままで部屋まで運ぼうと思ったんだ。
……ズボン、はかせるだろう。普通~
嫌だ。
性器が丸見えだ。
しかも、性器の根元にはリボンらしき布が巻かれている。
ユキトの几帳面さを慮 ると、恐らくリボンの素材は透け感のあるレースで、色はピンク。蝶々結びされている。
俺にピンクは似合わない。
否
ピンク以外のリボンだったら結んでいいという問題ではない。
そもそも性器は、リボンを結ぶ物ではない。
……クッ、なんという屈辱だっ。
しかも、なぜ
こんな事をされているのに、俺のアソコは萎えないんだっ。
(………………萎えてくれ)
こんな筈ではッ~~~
…………………………醜態だ。
「暴れるなッ」
ナツキ、と小声でユキトがたしなめる。
「前から警備のαが歩いてきたぞ。お前の可愛い雌しべが見えてしまうなァ?」
可愛いは余分だ。
それと、俺のは『雄しべ』だァッ!
きゅっとユキトにしがみつく。
言われるままになるのはシャクだが、見られるよりはマシだ。
今の俺は、普通ではない。
根元をピンクのリボンで縛られて……膨らませているのだから~~
こんなの、俺じゃない。
固くなったソレをユキトに押しつけるが、やむを得ない。
我慢しろ、ユキト。
「なぁ、可愛くビュクビュク震える雌しべが当たってるんだが」
我慢しろっつってんだろ!
心の声を聞け。
それと、可愛い言うな。
『凶悪』だと訂正しろ。
あと、俺のは『雄しべ』だァッ!
「これは、つまり……ここで犯せ、という解釈でいいな?」
…………………………ハァァ~???
あほかァァァーッ!!!
馬鹿!
天然!
ド変態!
一体どうしたら、そんな思考に辿り着けるんだッ
シルバーリベリオンたる、この俺の予測を遥かに凌駕するとは。
さすがは、「神に似たる白き魔神 」《ローエングリン》を駆るαの稲妻・ユキトだ。
…………などと
称賛するわけないだろうーッ!
切実な俺の思いが、まるで届かない。
お前の思考は、まさにビームを跳ね返す《ローエングリン》だなっ。
それでも、俺は希望を捨てない。
………ズボン、はかせてくれ。
ナツキ、と……小声で呼ばれた。
「あまり、俺に体を擦り寄せると不快だ」
だから我慢しろよ。
アレが当たるのは。
お前に当てなければ、レースのリボンごと見えてしまうんだ。
「見えるだろ」
だから、そう言っている。
心の声で。
「前から歩いてくるαに、雄穴が丸見えだ」
…………………………は?
お前の心配、そっち★
俺の思考をことごとく跳ね返す、この「神に似たる白き魔神 」がァァァーッ!!
………………お前の思考、神ってるよ。
お尻の孔が見えるの、仕方ないだろ。
俺だって、見せたくないけど~
あぁ、もうっ!
お前がちゃんとズボンはかせてくれてたら、こんな目には遭わないんだよ。
俺のズボン~~
下着がないと、変質者っぽいな。
パンツもはかせて。
あぁ、もうっ!
戦艦マルク
ここには、まともなαはいないのかっ。
ピッ
回廊に電子音が響いた。
「無線だ」
どうやら、前から歩いてきたα警備兵に無線連絡が入ったらしい。
「ついてるな。ナツキの裸を見られずに済む。無線に気を取られている間に通り抜けるぞ」
カツン、カツン……
靴音が響く。
「……は、はいっ」
擦れ違い様、声が聞こえた。
αは無線相手に恐縮しているようだ。
「はいっ、今すぐ!……シキ一尉!」
「私にか?」
耳にかけた小型無線機を手渡すと、警備兵は走って去っていった。
「誰だ……」
不意に、無線のランプが青く光った。
…………『Bitte .』
まさかッ
この声は………
『Ist Natsuki dort ?』
黒の支配者 !!
ともだちにシェアしよう!