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Ⅴ【マルク】第30話

初めての事で………… そのっ……どうすればいいか分からない。 腕はどこに置いてればいいのだろう。 ベッドの上? それとも、ユキトの肩にまわした方がいいのか? 顔はどこ向いてればいい? 天井見てればいいのか? ユキトを追ってる方が正解か? ……ずっとユキトを見ているのも、恥ずかしいけれど~ 声はどうしようっ。 声帯の毒が抜けていないから、まだ声が出せない。 ………………こういう時は、その……いわゆる抱かれる立場の人間が、声を出すべきものだと心得ている。 暗黙の了解、というか…… マナーというか…… 俺は男だから、喘ぐ事はないが。喘ぎに似た声くらいは出してあげた方がいい……よな? たぶん、その方がユキトも喜ぶ。 (声は出ないけれど、出してやろう) きっとユキトも緊張しているだろうから。吐息で、喘ぎを真似してユキトをリラックスさせてあげよう。 ………緊張していると………………アレが役に立たなくなる……らしいからな。 俺は年下だけど、Ω解放軍 統帥だから。常に先頭で、リードすべき立場にいる。 ここは、ベッドという名の初陣(ういじん)だ。 ………………ユキトは初めてなのだろうか? 既に経験済み? ………経験してたら、誰とヤったんだろう……… ………って。ダメだ、ダメ! (集中!) ユキトも安心して集中してくれ。 俺が、お前の緊張をほぐしてやるぞ! 息、吸って~……… 喘ぎに似た吐息を出す。 ………『アァン♥』 「ナツキ」 ユキト! 俺、上手くできただろ♪ 褒めてくれるか? 「俺、まだなにもしてないよ」 ……………… ……………… ……………… 「なんで喘いだの?」 …………………………ちがった?

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