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Ⅵ【ファウスト】第1.5話 (おまけ+)
《おまけ+》
- passion 〔受難曲 ~H一等兵の憂鬱~〕-
俺を覚えているだろうか?
俺はハラダ。階級は一等兵。
先月、昇格したばかりだ。
戦艦マルクの地下槽底 ジェネラル格納庫で、α-ジェネラル《タンホイザー》の整備を行うのが俺の任務だ。
マルクに着艦した新型ジェネラル《ローエングリン》の整備も、俺が行った。
やっと先月昇格したばかりの俺は、まだα-大日本防衛軍の一兵卒。
皆は、俺の事なんて覚えていないと思うが……
シキ一尉には、声を掛けてもらってるんだ。
伊勢湾海戦から帰還したシキ一尉が、Ω捕虜を連れて《ローエングリン》から降り立った時に!
何度も繰り返すが、先月昇格したばかりの一兵卒である俺なんかの名前と階級を覚えて頂いていた事に、ものすごく感動した。
国際軍事法 第32項に基づいて、Ω捕虜の性病検査を一尉に進言したのは、俺なんだ!
一尉には、出過ぎた提言を叱られてしまったが……
しかし、一尉のような上級軍人の方に名前で呼ばれて……この上なく嬉しかった!
(尚、余談ではあるが。あの後、捕虜の身柄を受け渡した医務班によって、Ω捕虜の性病検査が行われたそうだ。
検査結果は陰性だったので、一安心だ)
Ω政策強行派が大多数を占める戦艦マルクにおいて、Ω融和派のシキ一尉の立場は弱い。
一尉は戦況を本部に報告する目付 として同行しており、マルクの正規兵でない事もあって、一尉を悪く言う上官も多いけれど。
俺は、シキ一尉を尊敬している。
『神に似たる白き魔神 』の異名を持つ《ローエングリン》を操縦する一尉は、新型ジェネラルの威力を最大限に発揮し、閃光の如く敵を殲滅 させる戦闘から、αの稲妻と呼ばれている。
《ローエングリン》を整備する俺には分かる。
あの複雑なシステムを動かせるのは、α軍でも極わずか。
一尉は、紛れもなくエースパイロットだ。
仲間思いで、Ω型β投入作戦を決行した琵琶湖決戦で、迷わずΩ型β達の救出に向かったのも一尉だ。
シキ一尉のような軍人になりたい。
一尉は軍人としても、一人の人間としても、俺の目標である。
しかし…………
(なんなんだァァッ!)
尊敬するシキ一尉の、今のこの行動はァァッ!
俺は、シキ一尉に銃口を向けている。
一兵卒の俺である。
ここは海上。マルクに乗っているのは、限られた人員だ。
下級兵士は、本来の職務以外にも様々な雑務をこなさねばならない。
上官の命令により、俺はΩ捕虜の引き渡しに駆り出されている。
『Ω捕虜の迅速な捕縛及び銃殺』……
受け入れ難い。
だが、軍人である俺に拒否権はない。命令には絶対服従だ。
こんな事はしたくない。
マルクがΩ解放軍の攻撃を受けている非常時に……
そう!
今は非常時なんだ!
非常時なのに~~~
シキ一尉!
あなたは、なんと言ったんだッ
……『命令だと?本艦が攻撃を受けているこの非常時にッ』
そう、あなたは……
……『本艦が攻撃を受けているこの非常時にッ』……と。
確かに、あなたは言ったんだ。
あなたも、マルクが非常事態である事を自覚している筈なんだ。
それなのに…………
なんなんだァァッ
あなたのその格好はァァァーッ!!
スッポンポン♠
Ω捕虜も一緒に、スッポンポンかァァァーッ!!!
ピロートークじゃないな。
室内に押し込んだ時の体勢からいって、明らかに今からヤろうとしてたよなっ。
ベッドのシーツの乱れ様と痕跡
ゴミ箱に捨てられた使用済みの黒いゴム
証拠はそろってるんだ!
既にヤり終わったんだろう。
なのに、あなたは股間のナニをどうして勃たせてるんだッ
ガッチガッチに!
その猛々しいイチモツで、なにをしようとしてたんだぁッ
あなたの言葉をそっくりそのまま、俺は、あなたに返したい。
(本艦が攻撃を受けているこの非常時にッ!!)
ヤってる場合かァァアーッ!!!
アラート鳴りまくってんのに。
ヤる?
ねぇ、この状況でヤる?
《ローエングリン》が着艦した時から、イチャイチャしてたし。
Ω専用19独房でも、イチャついてるの監視カメラに録画されてんだぞっ。
この上、一発ヤっといて、まだヤる?
大事なことなので、もう一度繰り返す。
アラート鳴りまくってるこの非常時に、ヤってるんじゃねェェェーッ!!
ハァッハァッハァッハァッ
尊敬するシキ一尉だが、敢えて心の中でタメ口を叩かせてもらう。
………萎えろよ、いい加減。
立派なのは分かったから。
Ωの方も、ちゃんと萎えろ。
そっちは皮かぶってるから……
(お前達………絶倫かッ)
シキ一尉……恋人の裸、守ってるつもりでしょうが……メチャクチャ見えてます……
ド天然だ………
この人………
ド天然だ………
軍人としては尊敬できるが、人としては考え直した方がいいかもしれない。
………押し入ったのが挿入前で良かったよな、俺~~♠
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