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Ⅵ【ファウスト】第2話
俺が、銃殺だと……
見せしめだ。
αは、マルクへの攻撃はΩ解放軍だと思っている。
敵への見せしめに、俺を殺す気だ。
銃口から守るユキトの背中が、俺に寄り添った。
『行くな』……背 が語っている。
「副総理の命令か」
「一尉は、我々が独断で行動を起こしていると、お疑いなのですか」
「命令したのは副総理か、と尋ねているだけだ。副総理はマルク最高責任者だ」
機銃の引き金を引き、脅しをかけようとした部下を部隊長が制止した。
「事が済んだ後 に、あなたが直接お聞きになれば、よろしいでしょう。
副総理は一尉の御兄君なのですから」
部隊長が拳銃を構えた。
「あなたもα軍人ならば、命令に従う義務があります」
ククッ……
笑いが込み上げてきた。
こいつは実に滑稽な茶番だ。
α……
お前らが欲しがっているのは、俺の命だろう。
俺の命を渡すまいと、ユキトが命を張っている。
α、お前らは今、欲しいものを手に入れるために何を賭けている?
お前達は強者じゃない。
何も賭けるものを……
誇れるものを持たない……
お前達は、生まれながらの弱者なんだよ。
「フフハハハー」
「貴様ァッ、なにがおかしいッ」
銃口が俺に牙を剥いた。
「笑わずにはいられないだろう?ここにいるα全員が、俺に騙されていたのだからな」
「……喋れるのか」
部隊長の眉が跳ねる。
「あぁ、そうだ。口をきけぬ振りをして、このαに近づいたんだよ」
………ナツキ?、と。
ユキトの唇だけが動いた。
フッと左目の菫 を、俺は揺らす。
「見たところ階級も高そうだし、顔もいい。上手く取り入って、こいつのオトコになって、この戦艦を裏から牛耳ってやろうと思ったが……」
菫に嘲りを宿す。
「とんだ見当違いだった。お前達の上官に付いていたら、俺もこんな事にはなりはしなかっただろう」
だが……と。
紡いだ赤い舌が、チロリ……
唇を舐める。
「ココは極上だった」
背後から伸ばした手が、脚の付け根にそびえる雄の幹を撫でる。
ブルンッ
濡れた昂りが勇ましく、上下に揺れる。
「デカマラをご馳走さま♪」
チュッ
うなじにキスした。
……俺を守ろうと賭 してくれたお前の命は、俺の命で守るよ。
ありがとう、ユキト……
両腕を頭上に上げた。
「俺を連れて行け」
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