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Ⅵ【ファウスト】第8話

Ωである俺は、子を宿す。 なんのために子を宿すのだろう…… なんのために子供が産まれるのだろう…… αとβ そしてΩ 孕ます側と、宿す側の、どうして性が分かれているんだろう。 俺には、孕ます側の気持ちが分からないばかりか…… 子供を宿す事の意味さえ分かっていない。 命の尊厳を語っておきながら…… なんて薄っぺらい理屈を叩いてたんだ……俺は…… (なんで俺、Ωなんだろう) 愛する事の終着点は、子を宿す事なのか? そうだとしたら、俺は今も愛さえ分からぬままで。 愛する事もできずにいて…… 愛される事が苦しいよ 崩れる体を抱き止めてくれたのは、ユキトじゃない。 「人はね。欲しいものを誰かに求める生き物なんだ」 だから、君も……… 「自分の中に、答えを求めちゃいけないよ」 大きな掌が、そっと髪を撫でた。 「誰かに求めていいんだよ」 俺を包む腕の温もりに、 涙が零れた………

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