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Ⅵ【ファウスト】第27話
ジアァァァァー
防火シャッターが上がった。
現れたのは、ガスマスクを装着したα兵士。
そして、彼らを率いるユキトだ。
その顔にガスマスクはない。
運命のα
『番 』にならなくてもフェロモンの影響を受けない特性を持つ、運命で結ばれた唯ひとりのαだ。
『番』になれば、Ωの発情期がなくなり、αが発情をコントロールしてくれる……というが。
(どうして、ユキトは俺を『番』にしないんだろう)
ユキトとは秘密の婚姻を結んだ。
結婚したけれど『番』ではない。
ユキトは俺と、これ以上深い関係になるのを避けている?
子供さえ産めばいいのだろうか。
結局俺は、遺伝子を残すためのΩ……
それ以上の必要性はないし、望まれてもいない。
そうなのか、ユキト?
(……今は、そんな事を考えている場合じゃないだろう)
ひとり、頭 を振る。
この作戦の陰の立役者はユキトだ。
俺のフェロモンの影響を受けないユキトが、濃縮フェロモンを消火栓に仕込んでくれた。
すまなかったな。
『俺から離れろ』と言って。
裏切り者を全員、洗い出すためには敵を油断させねばならなかった。
軍人で体術にも長けているお前が傍にいては、敵が警戒する。
俺は単独行動する必要があった。
囮 になるために。
お前を遠ざけた。
「作戦は成功だ」
流した視線にユキトが頷く。
「元 提督及びほか三人の身柄を確保!」
ユキトの指示で、ガスマスクの隊員がダッと走る。
床に伏すα 四人に、瞬く間に手錠を掛けると、両脇を抱えて引っ張る。
最早、立ち上がる力もないのか。
フェロモンに犯され、膨らんだ着衣の前をだらしなく濡らした体が、這うように引きずられていく。
「シキ夫人の安全を確認しろ」
ユキトの指揮のもと
ガスマスクの兵士が、死角に潜んでいる残党がいないか、銃を構えて周囲を見回した。
………………おい、
ユキト………………
なんつった?………………
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