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Ⅵ【ファウスト】第57.5話 (おまけ+)①
《おまけ+》
- Romantsch hört nicht auf .
〔ロマンチックが止まらない〕① -
「おい、愛人」
「………」
「愛人」
「………」
「聞こえてるだろッ、愛人!」
ダメだ。
アキヒト!
ユキトはつむじを曲げると、意地でも喋らないぞ。
「俺の嫁から手を離せ!嫁はαの子供は産まない」
逆効果だ!
「………」
ほら~
ユキト……更につむじを曲げてしまった。口がヘの字になっている♠
こうなってしまったら、ユキトはテコでも動かない。
絶対、返事しない。
「諦めて、嫁から手を離せ。愛人!」
アキヒトっ、それがダメなんだ。
ユキトの前では、俺を統帥と呼んでくれッ
「……ぁ」
ユキトが俺の右手……ぎゅっと握ってきた。
俺も、ぎゅって握り返すべきか?
………ぎゅっ
「ァっ……」
微かに。
ほんのわずかだけど。
口許、少しだけ綻 んだユキトの横顔に、ドキンッ
鼓動が跳ねた。
「統帥からも言ってください。統帥はαの子供は産まないんですよねっ!」
「……ァ…う……」
ア~キ~ヒ~ト~
俺を統帥と呼べっつったけど。
なぜ今、このタイミングで呼ぶんだァァーッ!
ほら、みろ。
ユキトの口がまた、ヘの字だ♠
もうちょっとで、喋ってくれそうな雰囲気だったのに。
元の木阿弥 じゃないかッ
俺は、Ω解放軍 統帥 シルバーリベリオン
……αの子供は産めない。
だからと言って!
今ここで、このタイミングで、どうして俺に振るッ?
「嫁もこう言っている。見苦しいぞ、愛人」
嫁っつーな!
「………」
ユキトも、なにか喋ってくれ。
このままじゃ埒 が明かない。
「たくっ。俺ばっか喋って、喉が渇いた。……統帥のミルク、飲もうかなー?」
「……俺の?」
水筒、持ってきてないぞ。
マルクに遠足に来たんじゃないんだから!
「バナナは大好物のおやつです♪」
「……え?そうなのか」
「はい♪」
遠足の分類上、バナナはおやつに入るんだな。……知らなかった。
「トロトロの練乳がけ♪統帥のバナナ。頂いていいですか?」
遠足に来たんじゃないんだ。
「だからアキヒト、俺はバナナなんて持ってないぞ」
「統帥は持たなくていいんです」
………??
持ってない物を、アキヒトはどうやって食べるんだ?
練乳かけて……
「俺が握って、よくしてあげます。だから、統帥♪オナる必要ありませんよ」
オ、オ……
「オナァァァァーッ!」
「オナニー」
そう、それ!
「オナニーっ!!」
「……好きなんですね♥」
そうじゃないわッ!
好きだからするんじゃない!
……嫌いでない手慰みだ。
オ…ナニィ……は、1日1回 たったの5分!
スピードラーニングしながらだって、できるぞ!
フフフ……
お前には真似できまい?アキヒト
スピードラーニング・オナニィ
人類史上かつて、これ程までに高尚な自慰行為が行われただろうか?
アレクサンドロス大王も
ナポレオン・ボナパルトも
スレイマンⅠ世も、成し得なかった偉業である。
そうさ……歴代の英雄達が姿を消していった。兵 どもが夢の跡さ……
それは誰も辿り着く事のできなかった、まさに神なる領域。
だが、俺は違う。
シルバーリベリオンの頭脳が、神の領域にまで高めた知略的オナニィを可能にしたのだ!!
アキヒト……
お前にはできまい。
1日1回 たったの5分!
スピードラーニング・オナニィ!!
フハハハハー
この知的オナニィはな……早漏の俺だからできるんだよ!
「俺の右手よりも、お前の手が勝るだと?」
言ってくれるじゃないか。
「手コキ、気持ちいいですよ♪皮、剥いてあげますね。統帥のモンキーバナナの皮♪」
「~~~」
アキヒトォォォーッ
「誰がモンキーバナナだァッ!」
俺のはフィリピンバナナ
「ジャイアント・キャベンディッシュだァァーッ!」
「……統帥、自分で言って哀しくなりませんか?ジャイアント……って~(♪)」
おい、なんだ?最後の『(♪)』はッ
括弧つけても、全然隠れてないぞ。
フォローになってないぞ。
「アキヒトォォーッ、湯気出して寝てろォォー!」
〈切なさは(フー)止まらない〉←つづく
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