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Ⅵ【ファウスト】第64話
クク、ククク……
フフフハハ………
フハハハハー!!
笑いが止まらない。
「いける……いけるぞ!」
この機体の機動力、戦艦マルクの火力
両方合わせれば!
「《タンホイザー》掃討は夢ではない!」
見ろ。
統率のない部隊がバラバラだ。
左翼が隊を為していない。
「翼はもぎ取ったぞ」
陣は死んだ。
敵は単機でかかってくる。バラバラに分散した戦力は極めて低い。
「これが現実だ」
現実なんだよ。
ここは戦場だ。
命を駒にして、命を奪い合う戦争だ。
お前達に守るものはあるか?
自分の命しか守れない戦士は弱い。
これが戦場の現実なんだ。
フハハハハハハー
「お前達は海になれ」
さぁ!
「一機残らず、海に墜ちろ!」
通信ボタンを弾く。
「射出用意、左舷 《タンホイザー》……高度を保て」
無線の声が返る。
『出力MAX』
「撃 ェェーッ!」
朝日よりも眩しい光が、空を貫いた。
《タンホイザー》が燃える。
西の空に朝焼けを描く。
「砲撃部隊長、応答せよ。次の射出までの時間は?」
『3分45秒です』
「次の砲撃までガトリングで狙撃。敵ジェネラルを本艦に寄せつけるな」
『Alles klar .』
無線を切り替える。
「通信室、聞こえるか」
『ウォォォオオーッ!!』
………どうした?
通信室が混乱している。なにが起こった?
………否
混乱しているんじゃない。
この雄叫びは歓喜だ。
通信室の隊員達が、全員で歓びを分かち合っている。
『俺達は生きられるぞー!』
『東京に帰るんだ!』
『全員で帰ろう!』
『絶対生き残るんだー!』
……そうだよな。
αも人間だ。
死ぬのは嫌だよな。
全員で生きよう。
この戦場を全員で生き抜こう。
俺が、お前達を生かしてやる。絶対に!
『東洋のジャンヌダルクだー!』
………………は?
『オルレアンの乙女!』
『マルクの聖女様ー♥』
………………誰の事を言っている?
『シキ夫人、万歳!!』
『東洋のジャンヌダルク、万歳!!』
『オルレアンの乙女、万歳!!』
『マルクの聖女様♥バンザーイ!!』
俺の事かァァァーッ★
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