253 / 288

Ⅵ【ファウスト】第71話

「マルク巨砲(おおづつ)一斉射撃と同時にハッチより《タンホイザー》出撃。 ジェネラル白兵戦の指揮官は、シキ ユキト一尉。防衛戦を展開しつつ、焼津港を奪取する。 ……戦略目標は変わらない」 『しかし、私が加わる事でプロセスは大きく変化する。この一手で、我々は勝利へ向かって加速するだろう』 モニターの中の指がパネルを弾いた。 『私は時間を守る男だよ。君を迎えに行く時間に、一分だって遅刻していないよ』 指先がパネルを滑っていく。 なにを始める気だ。 『もう始まっている』 政府専用機の操作パネルが点灯する。 司令室と連動しているのか。 『EICAS強制解除 ラダー閉鎖、フラップ閉鎖 エンジン離脱! ブロックアウト』 予備エンジンが停止した。 『降下(ディセンド)!』 ガシンッ 鈍い音が響き、機体に衝撃が走った。 刹那、体が浮遊感に包まれる。 落下している! エンジンの切り離された機体が、海の重力に引き寄せられる。 墜ちる! 海面に叩きつけられて、このままでは機体が木っ端微塵に大破する。 ハルオミさんっ、あなたはなにを! あなたの戦略はなんなんだッ 『押すんだよ!』 光がコクピットを照らした。 『ナツキ!』 中央 一枚のパネルだけが青く輝いている。 「ハルオミさん……」 俺は、あなたを 「信じる」 『信じろ』

ともだちにシェアしよう!