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Ⅵ【ファウスト】第75話

降下(ディセンド)!』 滑空した鉤爪(カギヅメ)が《タンホイザー》ショルダーを引きちぎる。 「上昇(クライム)!」 羽ばたきの乱気流(タービュランス)がミサイルの軌道をねじ曲げる。 磁力フィールド発動 完全防御空域が《ファウスト》を守護する。 無敵だ。 空において《ファウスト》は完全無比の真価を発揮する。 滑空スピードは音速(マッハ)の域に迫る。誰にも止められない。 捕まったら最後、鉤爪がジェネラル装甲を破壊する。回避不可能。 攻撃後に隙がない。 上昇の羽ばたきで巻き起こる乱気流が磁力フィールドを生成し、敵からの攻撃を歪める。 空の王に触れる事すらかなわず、お前達は海に沈むのだ! 「磁気タービュランスを発動させて降下する」 『いい判断だよ』 弾む声が無線から返った。 《ファウスト》が羽ばたく。 乱気流が磁力フィールドを生んだ。完全防御空域で敵はいない。 滑空する。 『ウィングを狙え』 「了解」 バキバキバギィッ 閃光と火花が交錯する。 「上昇(クライム)ON」 大鷲が羽を広げた。 翼の(いなな)きの下で、爆発が連鎖する。 ウイングを破損した《タンホイザー》から飛ぶ爆破の破片が、磁力フィールドによって歪められて、周囲の《タンホイザー》の胸を、胴を貫く。 《ファウスト》は防御システムすら、攻撃に変えた。 敵を爆破し、ミサイルにしてしまう。 敵さえ己が武器にして操る…… 《ファウスト》はシュヴァルツ カイザーの(うつ)し身だ。 『最初にそう言ったろう……』 口許に描いた軌跡が、クッと吊り上がった。 『私の分身だとね』 チロリ……と。 赤い舌が唇を舐めた。 『私の分身は、君にしか触らせないよ』 艶めいたサファイアの双玉に見つめられて、頬が赤くなってしまう。 『私の中に君がいるというのも悪くない。(むし)ろ最高の気分だよ』 「ハルオミさん……」 『君は、私の中に閉じ込めた。私の中で君は守られるんだよ。 出力MAX 磁気タービュランス発動 磁力フィールド展開!』 「STAGE(ステージ) No(ノー) damage(ダメージ). シフトON ファイナル チャージ」 波を蹴り、眼下から《タンホイザー》の群れが蟻の子のように押し迫る。 「羽ばたけ!王の翼!」 『完全防御空域 領空支配!』 乱気流が磁場をつくる。磁極の嵐が吹き荒れる。 漆黒の翼が、虹色のオーロラをまとった。 『計画通りだ(ノ ー チ ェ ン ジ)。……君達に羽は要らない』 ………………時間だ。 『Achtung, Feuer(アハトゥング フォイヤー〈撃てェェーッ〉)!!』

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