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Ⅵ【ファウスト】第76話

3分45秒 この時間を守りきった俺達の勝ちだ。 マルク巨砲(おおづつ)が火を噴いた。 西の空が、逢魔(おうま)刻色(ときいろ)に染まる。 爆発が空を飲み込む。 翼をもぎ取れ! 炎と爆風が空を薙ぐ。 《ファウスト》ごと、マルクの巨砲が海を、波を、空を、《タンホイザー》を撃ち(たお)す。 見えるよ……… マルク一斉射撃が描いた戦場に、この空が大海に墜ちていくのが…… 燃える(あさひ)が、蒼穹を緋に染め抜く。 ミサイルの裂いた西の空に、朝焼けが燃える。 見える……… 失墜していく。 重力に引かれて…… 《タンホイザー》が翼を焼かれて、波間に沈む。 墜ちろ…… 墜ちるんだ…… 「全部墜ちろォォーッ!」 この世界を お前達に焼かれる前に、俺達はお前達を燃やさねばならないんだァッ! 極光が照らす。 俺は虹の光と、空から墜ちる翼を焼かれた鋼鉄の塊を見つめている。 ミサイルが吹き荒れる。 嵐の空で生存できるのは、磁力フィールドによる完全防御空域の中だけ…… 《ファウスト》だけが生きる。 未来を見るために生き抜く。 『星』を堕とせ テロリズムを掲げて世界を燃やす『明け染めの星』を。 マルクが堕とす 砲弾がやんだ。 (来る!) マルク空母艦より《タンホイザー》一斉出撃 敵を掃討せよ! ………「来るなッ!」 磁力フィールドを張ったのはとっさの判断だ。 足りない。 完全防御空域の範囲は《ファウスト》周囲だ。 味方《タンホイザー》まで届かない。 マルク《タンホイザー》が墜ちた。 「お前達は……」 ……撃っている。 なにを撃ってるんだッ 生き残ったテロリストの《タンホイザー》が同じテロリストの《タンホイザー》を撃ち落としている。 敵が敵を撃つ。 同士討ちをしている。 《タンホイザー》が《タンホイザー》を撃ち落として、機体をミサイルにしているのだ。 背後から撃ち落とす。 同じ味方を撃ち殺す。 これがテロリストのやり方か。 肩を、腕を、脚を、胴を、頭を吹き飛ばして、ジェネラルを爆弾代わりに使う…… あの中には生きているんだ。 まだパイロットが生きているんだ。 生きた人間ごと爆弾にする。 これがテロリストの……お前達のやり方か! 「お前達は人間かァァーッ!」 マルク《タンホイザー》が燃えた。 敵《タンホイザー》の機体ごと爆撃を受けて、腕をもがれて海に落ちる。 爆発に巻かれて、波に飲まれていく。 守れない。 俺は、なにも…… 命を…… 失われていく命を止められない。 同志を撃つテロリスト 爆発するジェネラルに焼かれて墜ちるマルク《タンホイザー》 何本もの水柱が、空を突き刺す。 味方も、敵も、燃えていく。 海に沈んでいく。 戦争じゃない。 殺戮だ。 一体、俺達は…… お前達は…… 「なんのために戦っているんだァッ!!」

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