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Ⅶ【今世神君】第3話

『《タンホイザー》、テロリスト ジェネラルに一斉射撃。本艦に寄せつけるな。 弾が尽きるまで撃てェッ!』 『Alles klar(アレス クラー〈了解〉).』 海上が真っ黒に染まった。 ミサイルが火の雨を降らせる。 漆黒の空から、テロリストのジェネラルが失墜する。 残塊が爆煙で煙る海に飲まれていく。 『マルク砲撃隊、射撃用意。角度83.1度』 ほぼ垂直じゃないか! 『《ファウスト》磁気タービュランス発動』 「磁力フィールド展開」 完全防御空域 出現! 『ガトリング! Achtung, Feuer(アハトゥング フォイヤー〈撃てェェーッ〉)!!』 上空にガトリングが火を噴いた。 《ファウスト》のまとうオーロラの衣が弾の軌道を曲げる。 硝煙の空に弾丸が舞う。 ギュワァァーン 頭上から落ちてくるのは、鉄の塊だ。 一つ、二つ、三つ……四つ 海面に衝突して水柱を噴き上げる寸前に見たのは、キャノン砲を抱えた《タンホイザー》の腕だった。 こいつら……先回りしていたのか。 自爆テロのどさくさに紛れて、上空からマルクを急襲する作戦だったのだ。 ブクブク泡沫を立てた海に、キャノン砲の腕が沈んでいく。 『シュヴァルツ カイザーに読めない策はないよ』 『関係ない』 不意にモニターの…… 唇の下のほくろを隠した指が笑った。 『これは策ではない。………神の導きだ』 立てた人差し指の爪の先が、天を突き刺す。 『子鼠の思慮は神の察するところではない』 我、今世神君こそ、天の頂上に立つ星也!! ヒュンッ 口許で、人差し指が降り下ろされた。 『………………人の子よ、懺悔せよ』 唇の下のほくろが吊り上がった瞬間 対岸の星が光った。

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