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Ⅹ【シキ ハルオミ】第4話
速い。
俺がプログラムを書き換える前に、ハルオミさんの指が操作パネルを滑る。
『君の思考は読んでいる。プログラムは改編させない』
先手を打たれる。
幾らプログラムを書き換えようにも、ハルオミさんが阻止してくる。
新たなプログラムが先行し、追いつかない。
ハルオミさんのプログラミングが遥かに上だ。
解除方法にあと一歩、届きそうなところで遠ざかる。
わざと、そうしている……
ハルオミさんは、わざと解除方法に俺を近づけて、阻んで、遠ざける。
そうした方が、精神的ダメージが大きいからだ。
俺に諦めさせようとしている。
俺の思考は、シュヴァルツ カイザーに操られている。
シュヴァルツ カイザーの見えざる腕で、諦めの崖下に引っ張られている。
(けれどっ)
俺は落ちない。
あなたを引っ張り上げてやる!
ルゥールゥーッ
突如パネルが赤く染まり、警告音が鳴り響いた。
ハルオミさんのトラップだ。
俺のプログラミングが崩れていく。
『機械相手なら少しずつ積み上げれば、少しずつ正解に近づいていく。
だが、いま君が相手をしているのは生身の人間だ。
君が考えるように、私も考えている。
相手が悪かったね』
まだだ……
まだ諦めない。
崩れたら、もう一度積み上げればいいだけの事だ。
まだ諦めない。
『抵抗されればされる程、屈服させ甲斐があるよ……』
ルゥールゥーッ
二度目の警告音が鳴った。
『どうだい?私の下で足掻く感想は?』
赤いパネルが、俺の組み立てたプログラミングを壊していく。
『君を組み敷くのは、最高の気分だね』
きゅっと唇を噛んだ……
俺は、あなたに届かない。
『君が相手をしているのは、シュヴァルツ カイザーだ。
思考を読み、思考を操る私は数手先を読んでいる。私の思考は、君では見えない一手先を見ているんだよ』
「……だからハルオミさんが正しくて、俺は間違っていると」
俺の見えない未来まで、あなたは見ているから。
『正解だよ。君の思考は、正しい答えに辿り着いたね』
「違う!ハルオミさんは間違っている!
あなたの一手が正しいとは限らない!」
『だったら……』
サファイアの眼光を、すっと細めた。
『君に、私の思考を覆せるのかい?
なにもできない君の弁論は、弱者の言い訳に過ぎないよ』
「強いとか、弱いとか……それは、未来の正しさを計る物差しじゃない」
『だけど君は現に、私に屈服している。
未来は変えられない』
サファイアにかかった黒髪を、指先が弾いた。
『私の勝ちだよ』
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