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Ⅹ【シキ ハルオミ】第5話
俺が相手をしているのは、黒の支配者
思考を読み、思考を操る男だ。
機械じゃない。
生身の人間だから、彼は考える。
俺の思考を読み、一手先のそのまた先まで読んで、プログラムを書き換える。
《ファウスト》のプログラムは、常に動いている。
シュヴァルツ カイザーの思考によって……
そうなんだ………
相手は機械じゃない。
生身の人間なんだ。
人であるから、俺は勝てない。
(そうだよ!)
勝とうとしていたから、勝てないんだ。
俺は、あなたの策にはまっていた。
シュヴァルツ カイザー
相手があなたであるからこそ、《ファウスト》攻略法が見つかったよ。
あなたは機械じゃない。
人間なんだ。
俺は、あなたの妻で………
あなたは、俺の夫だから………
「あなたは、俺には勝てないよ」
菫 の左目が、サファイアを映した。
あなたを捕らえた。
………………ハルオミさん、相手が悪かったね………
モニターの中のあなたに、俺は口づけた。
唇と唇が重なる………
これが《ファウスト》プログラム解除方法だよ。
俺は、あなたに勝つ事にばかり固執していた。
あなたよりも数手先を読んで、あなたの上に行く事だけを見ていた。
でも、それじゃあダメなんだ。
あなたは機械じゃない。
あなたは人間だ。
機械じゃないから……
あなたの気持ちを動かさなければいけなかったんだ。
あの夜
銃口を突きつけた瞬間から、あなたの心は俺のものになったんだよ。
あなたの心を動かせるのは、俺だけなんだ。
ハルオミさん………
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