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Ⅹ【シキ ハルオミ】第6話

冷たいモニターの上で重ねた唇 俺の見つけ出した解除方法…… これで《ファウスト》が飛び立たなかったら、俺は…… 『……嘘だろ』 モニターの中で茫然と紡いだ唇が、不意に上がった。 ………フフフフ フ、ハハハハ……… アハハハハハー!! 『私の思考を超えるなんて。君はやはり、私の妻だよ』 私の妻は君しかいない。 『君を抱きたいよ……』 サファイアの中に映る俺を、柔らかな光が包んでいた。 『君の心も体も、私のものにしたい。 これからもずっと、君を私だけのものにしたい』 「……ハルオミさん」 『戦略で負けた事はなかったよ。 敗北がこんなにも心地良いものだなんて、知らなかった。……私は幸せ者だね』 瞳の奥に、微笑みがこぼれた。 『おいで、ナツキ』 両手を広げる。 『今度は私の腕で、君を守るよ』 大鷲の翼が、空に羽ばたいた。 蒼穹を駈ける。 あなたと俺の《ファウスト》が、ハルオミさん、あなたを迎えに行くよ。 クゥッと唇を噛み締めて、操縦桿を握り直した。 こんなにもバランスを取り辛いなんて。 今まではハルオミさんが、陰でサポートしてくれてたんだ。 それで手足のように《ファウスト》を操縦できた。 でも。 泣き言は言ってられない。 もうすぐだ。 駿河湾にマルクが見えた。 刹那に、天を水柱が突き刺した。 海流に流された過酸化アセトンの爆発が行く手を阻む。 グラリと機体が傾いた。 大丈夫だ。 損傷はない。 《ファウスト》は飛べる。 「待っててくれ、ハルオミさん」 水柱の彼方に見えた海は………… 青い海原に、鉄の塊が突き刺さっている。 あれがマルクなのか……… 海上の要塞と呼ばれた不沈艦が、鉄の棒になっていた。 ポツンと独りぼっちで、波に飲まれている。 青い海に、真っ黒い棒切れが刺さって…… もう半分以上、海中に沈んでいる。 海が轟いた。 爆発の真っ赤な炎にマルクが巻かれる。 「ハルオミさんッ!」 無線を叩く。 いるんだろう! 「応えてくれッ」 無事でいてくれ。 俺が迎えに行くから! 灰色のノイズだらけのモニターが、歪んだ画像を起こした。 ……『君に伝えたい事があるんだ』

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