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第2話
江坂と三国は大学時代からの友達だ。今では親友と言っていいほど、お互いの一番親しい友人。
もとは共通の友人の関係での合コンの面子だった。合コンに呼ばれると異性より同性の友人と親しくなるのはよくある話で、例に漏れず江坂と三国も会って初日に意気投合した。
何度か共通友人を含んでの遊んだが、その共通の友人より仲のいい友人同士になるのはあっという間だった。
お互い気を置けない関係で、初めて会ったその日に旧知の友のような感覚になったと二人で今思い出しても笑える話だ。
江坂の大学時代の思い出に、三国が出てこない事はないほど毎週毎週遊び呆けていた。それは勿論、三国も同様。
家飲みも、旅行も、映画も、遊園地も、どの記憶をとっても楽しかったと思えるのはお互いの存在があったからだ。
そんな大切な親友との関係は社会人になった今でも変わらず、頻度は減ったものの、定期的に会っては飲み会を開いていた。最近は学生時代のような家飲みも復活したり、旅行に行ったりと特に変哲もないけれど楽しかった。
…江坂は変哲をつけたかったのだけれど。
本日も変哲のない…三国の格好は少し普段と違うけれど、二人の間は何も変わらない飲み会となっていた。
「相変わらず美味いなぁこの店は!あれ?三国全然食ってなくね?」
江坂は満足そうに舌鼓をうっていたが、三国の箸はあまり進んでないようだった。
「あーちょっと食欲なくて」
「え!?珍し!」
いつもは仕事終わりは江坂が呆れるほど沢山食べるのに。パソコン作業が中心の江坂と違い、三国は理学療法士なので体を動かすからお腹が減るのだと言っていた。
「ん?今日仕事休みだったの?」
「いや?仕事してきたぞ?」
それでなぜお腹が減っていないのか?と思ったが、まぁいいかとお気に入りのマルゲリータと齧った。
先程から妙に笑顔だったり、急に元気がなくなったり、と三国の様子が気になりつつも、いつもと少し格好の違う三国をこそっと見つめていた。普段の姿も格好いいけれど、こんなフォーマルな格好も似合うなぁ…と思った。江坂と違ってがっちりした体型をしているのでかしこまった格好をすると男性の色気が増している気がする。勿論、そんな事は本人には言えないけれど。
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