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第3話

江坂がつけたかった変化とは…江坂は三国に対する恋心に自覚を持ったからだった。 厳密にいうと恋心を自覚したのは大学4年の時。三国と相変わらずしょっちゅう遊んでいた。それこそ彼女と遊ぶよりも沢山。彼女と話していてもいつも話の中には三国の事を話していたらしい。自覚はなかったが仕方ない。何しろその頃遊びに行くといえば三国と一緒だったから話に出てくるのは当然といえば当然だ。 「私より三国くんの方が好きなんじゃないの」 と彼女からは何度も言われた。彼女が変わってもいつも。そして4年の時に付き合っていた彼女に、別れの時に言われたのだ。 「まじで三国くんの事好きなんじゃないの?いい加減気持ち悪いんだけど」 江坂はその言葉に傷ついた訳ではない。何故か妙に納得してしまったのだ。え?まじで?という気持ちとそうかも?という気持ちが頭の中をうめていった。 彼女と遊んでいる時間より、三国のと遊んでいた方が楽しかったのは事実。だからってそちらばかり優先していたつもりは無いのけれど、無意識下でそういていたのだろうか。女性はそういうのに敏感だと言うし。いやいや、それは友達としてだし。そして…男同士だ。 そんな趣味はない。たしかに、三国の事は格好いいと思う。しかし、それはあくまで男として憧れるという意味で。細身の江坂は、ガッチリとした筋肉質の三国の体いいなといつも思う。Tシャツなど薄い服を着ていると服の上かでも分かるくらいだ。黒髪で短く切られた髪はあっさりした顔に良く似合う。顔が秀でてイケメンな訳ではないが、クシャッと笑う顔は柴犬を連想させて人を惹きつける。そして何事も悪く言わず、優しい性格も好きだ。 江坂はそこまで考えて、好きってなんだ!と頭のなかの自分にツッコんだ。 そんな事を悩み続けて1年。 お互い社会人になって畑違いの二人は勿論全く違う職場になった。理学療法士の三国は病院に。デザイナー希望の江坂はデザイン会社に。 江坂のデザイン会社の就業時間は正直めちゃくちゃで、病院務めのどちらかといえば規則正しい就業時間の三国とはなかなか会うことが出来なくなった。 その中でも会って笑い合うのが楽しかった。 何度も挫けそうになった社会人1年目をなんとか乗り切ったのは三国が話を聞いてくれて、頑張れといつもの笑顔で背中を叩いてくれたからだ。 しかし、話すと三国の中にはもう違う社会の生活があって、大学時代とは違い、三国の職場の環境など江坂は想像がつかない。 もうそこには江坂の知らない三国が居るようで、三国の話の登場人物につまらない嫉妬をしていた。 そこで、もやもやと心の中を渦巻いていた気持ちに気づいてしまった。 もしかして、これは恋じゃないのか?と。 何度も浮かんではかき消していた想い。悩んで悩んで…つい、確認したくて酔って寝ている三国にそっと口付けた。 心臓が口から出るんじゃないかと思うくらい高鳴っていた。 触れるか触れないかほどのキス。 しかし、それで充分だった。 今までのどんなキスよりも緊張して、唇が熱かった。ファーストキスなんかよりもずっと。 三国に恋をしていると確信してしまった。 しかし、それを伝えようなど考えてなかった。 このままで良かったから。

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