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a little tipsy!
家までの道のりは、気が気ではなかった。俺にひしと抱きついて眠っているやつの体温と、ちょうど首筋に当たっている熱い吐息に心の中は平静でいられず、窓の外で流れ行く街の灯りを見つめる事しか出来なかった。
家に着き、タクシー代を払って車を降りた。運転手は目を泳がせながら精一杯微笑みを作っていた。何か大きな誤解をされたに違いない。
なんとか夢と現実の間をさ迷っていて足元のおぼつかない高瀬を自分の家まで運び、鍵を開けて中に入った。俺の家はマンションの1階で、大の男を抱えながら階段を上らずに済んだのが幸いだ。
とりあえず高瀬の上着を脱がせて、ベッドに寝かせた。すると、身体を動かされている事に気づいたのか、高瀬がおぼろげながら目を覚ました。
「あれ…、ここどこ?…ん?……先生ん家の…ベッド?」
「そうだ。送ってってやるつもりだったのに、お前がタクシーの中で速攻寝たから仕方なくな。」
「あ……それは、ごめんなさい…。」
「別に独身だし不都合はないが、酒の量には気をつけろ。」
「うん…。」
高瀬は眉尻を下げ、反省しているような表情を浮かべた。
「今日のところはとりあえず休め。俺もいろいろやることやってからソファで寝るから。」
そう言ってリビングに向かおうと腰を上げた瞬間、
「待って……!」
と言って腕を掴まれ、なんだと思い振り返ると、勢いよく引き寄せられ、首に腕を絡ませて
「ねえ先生……抱いて?」
と、唇に息がかかる距離で、熱にうなされたような表情をしながら妖艶に誘った。
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