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第6話

もう一杯だけ呑んでいくわ、と、今から東門街のパトロールに戻る総悟を送り出した。扉の閉まる音を確認してから、真後ろの席でイヤフォンを着けてタブレットをいじる男に声をかける。 「……どう?」 「はい、ありがとうございます」 総悟が席を離れた隙にアイフォンのSIMをコピーし、ハッキングツールをしかけた。店の従業員も客も、2時間前に全員チームに入れ替えていた。 「……アイツとはまじで友達だからな。こういうのは、きついな」 「すみません」 「で?」 控えていた藤田将太は優秀なエンジニアで、俺の右腕のような存在だ。 「嘘はついてないようですね。連絡を取った痕跡は、まったくありませんでした」 「だから言ったでしょ?」 「ただ、」 そして犯罪心理学を学んだプロファイラーでもある。 「あの様子だと、接触すれば協力者となりうる可能性が、非常に高いと思います」 「あー」 「安藤さんもそう思いましたよね?」 親友に嘘をついて呼び出した。 今回の件ではどうしても必要な工程だった。 「そうだな。絶対にしないとは、言いきれないな」 「きちんと監視して、上に報告することをおすすめします」 「……仕方ない……わかった。本部長には俺から伝えるから、しばらく黙っておいてくれるかな」 「承知しました」 「……なに? そのなにか言いたそうな顔は?」 「いや、その、如月刑事と話している時の安藤さんて、関西弁だし、」 「神戸弁な。神戸のヒト、それ言うと結構怒るから気を付けて」 「あ、はい。そのなんと言うか、少し子どもっぽいと言うか…」 「莫迦っぽい?」 「……すみません」 「そうだな。あいつと話していると、つい、な」 「いえ。でも悪い意味じゃないですし、新鮮です。あ、それから、」 「ん?」 「如月刑事の周辺をちょっと動きますけど、安藤さんのマイナスになるようなことはしませんので」 「信用してる。おまえの好きに動いてくれたらいいよ」 グラスに移した黒ギネスはすっかり炭酸が抜けてしまっていた。 残りを一気に飲み干すと、どんよりした苦みと甘みで喉の奥がちりちりと痛んだ。

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