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第32話 独占欲(2)
もう片方を指先できつくこね回されれば、込み上がる気持ちよさと共に、何度目かわからない吐精をする。
けれどひくつかせる身体などお構いなしに、下からの律動は絶えず、口からは熱い吐息と喘ぎがひっきりなしに漏れた。
「やっ、あぁっ」
体勢を変えると、また激しく身体を追い詰められる。上半身をベッドに沈み込ませ、腰だけ高く上げた格好で彼に広がった孔を向ける。
もう何度も身体の中に吐き出したのに、リュウのそれは萎えることがない。
舌なめずりをして、目をらんらんと輝かせる表情にぞくりとした。彼は後ろから覆い被さり、うなじをきつく噛んでくる。
その痛みが麻痺して、快楽に変わっていった。
「あっ、リュウ、や、もう壊れ、る。頭、おかしくなるっ。んっ、ぁっ」
もう出すものも残っていないくらい、吐き出した。それでもなお彼は自分を求めてくる。最後は何度も空イキをさせられ、自分の身体が女にでもなったかのような気分だった。
彼の熱だけでイクのは気持ちがいいが、なんだか心許ない気持ちになる。
「Tu es beau 」
「……なに?」
ふと気がついたら意識が飛んでいたのか、リュウの小さなささやきで目が覚めた。
なにを言っていたのかは聞き取れなかったが、さんざん暴れた野獣は、どうやら健気な忠犬に戻ったようだ。
身体は重くてだるいけれど、タオルで汗や汚れを拭いてくれたのか、すっきりとしている。心配そうにのぞき込んでくる顔を、片手で撫でてやると、その手の上にリュウの手が重なった。
澄んだ茶水晶の瞳に、欲とは違う熱が孕んでいるのに気がついたが、それを自分は気づかなかったことにした。
彼とは上辺だけの関係が望ましいのだ。心は繋がっていないほうが、この先を考えればいいだろう。
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