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第69話 熱情(3)
「や、だめ、だ……ぁっ、こんなの、おかしくな、る。ぁっ」
まつわりつくような刺激は、高まった快感を身体にとどめて、それを捕らえて放さない。
激しく揺さぶられるよりも、長く熱を持ち続けて、頭の中がぼんやりとするほど惚けてしまう。快楽に落とし込まれるようにじわじわと刺激を与えられて、思わず涙がこぼれた。
過ぎるほどの快感に溺れ、縋るように目の前にある身体にしがみつく。指の先が食い込むほど強くしがみついても、リュウは奥深くへと押し入り、震える身体を追い詰めていくばかりだ。
「んっ、ぁっ、ぁっ、いやだ、リュウ、リュウっ」
「……宏武、可愛い。もっと気持ちよくしてあげる」
嫌だと繰り返しながらも身体は従順で、彼の動きに誘われるように腰が揺らめいていた。それがさらに快感を高めているとは気づきもせずに、自分で自分を追い詰めていく。
甘ったるい喘ぎ声が、堪える間もなく口からこぼれた。
潤んだ視界の先にいるリュウは、そんな自分をひどく愛おしげに見つめる。
その眼差しに見つめられると、胸が締めつけられたように苦しくなった。そんな目で見ないで欲しい。心が勘違いしてしまいそうになる。
繋がっていられるのはいまだけで、その先はもうないのだから、期待をさせないで欲しい。
その目で見つめられると、彼と一緒にいられる未来を想像してしまう。叶わない夢なのに、愚かな期待が胸に湧く。
いまだけなのだから、そんなに愛おしげに見つめないで――しかしそう思っても言葉には出せなかった。
まだ終わりにしたくないのだ。あと少し、もう少しでいい。彼と繋がっていたいと願ってしまう。
「宏武、なに考えてるの?」
「……なんでも、ない」
一瞬、心の内をのぞかれたような気がした。まっすぐな彼の瞳には、なにもかも暴かれてしまいそうだ。
それがなんだか少し怖くて目を伏せてしまった。しかし彼はそれを許してはくれず、意識を引き戻すかのように、深い口づけをする。
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