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「あのぅ……」
おずおずとかけられた声に逸也と巧はハッと振り返った。すっかり忘れていた、この珍客のことを。
「いろいろとご迷惑をおかけしてすみません」
頭を下げようとした若者の体がぐらりと揺れた。慌てて細い背中を支えると、骨に直接触ったかのような肉付きの薄さに不安になる。
「迷惑云々は置いといて、お前、ちゃんとメシ食ってる?」
「え?」
きょとんと見上げた不思議顔を、軽く睨むように逸也は見つめた。顔色の悪さは具合のせいとしても、削げたような頬のラインや窪んだような目の下のクマは、栄養不良からくるものだ。
「さっき持ち上げたらさ、女子か? つうくらい軽かったぞ。成長期なんだからしっかり食わねぇと、でかくなれねぇぞ」
「成長期って……。俺、成人してますけどっ」
血色の悪かった頬が朱を注いだように赤くなった。先ほどの弱々しい口調と変わって素が出た様子に、そこそこの元気はあるんだな、と逸也が安心して笑みを浮かべると、若者は自分の立場を思い出したのかまたうつむいてしまった。
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