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「これでも一応食べ物扱ってる商売だからさ、人様の栄養状態とか気になっちゃうのは職業病みたいなもんだ。悪く思うなよな。で、お前さ、腹減ってるんじゃないの?」
「減ってませんっ」
逸也と目を合わさないようそっぽを向いたまま言い切ったとたん、ぐうぅと腹の虫が本音を告げた。
「ぷっ、腹減ってんだろ? うちで惣菜買ってくれようとしてたんじゃないの?」
「ちっ、違います」
さっきよりも赤く染まった顔を腕で隠す様子に、巧が声をあげて笑いだした。
「にいちゃん、腹の虫は正直だぜ」
逸也は部屋のすみに片してあった座卓を真ん中へ出してから、売れ残った惣菜を手早く並べた。きんぴらやサラダに男前メンチ。
「売れ残りだけど、味は毎日ここの惣菜食ってる俺が保証すっから」
「売れ残り言うな。残ったのは雨のせいだからな」
「中高年のオナペットが作ったメンチ、うめぇぞ」
「だからその下品なキャッチコピーはやめろっつーの」
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