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いきなり同意を求められた若者は、口いっぱいだし巻き玉子を頬張ったままコクコクとうなずいた。目が真剣だ。
「しょーがねぇなぁ」
よっこらしょと立ち上がった逸也は、火を止めてもまだ湯気をたてているおでんを数種類深鉢に盛ると、座卓の真ん中にでんと置いてやった。
「これこれこれな、にいちゃん。手羽先が旨いよ」
巧は空いた皿に手羽先をひょいとのせてやると、もうひとつに手掴みでかぶりつく。よく煮込んだそれはたっぶりと出汁を吸ってホロリと骨から身が剥がれ、皮の部分は柔らかくトロリと舌の上でとろけ旨味だけを残して消えていく。
「うまぁ……」
心の底からこぼれたような呟きに逸也が満足していると、横から巧のガヤがまた入る。
「イチー、ビール飲みたい」
「て、め、ぇ、は、どこまで図々しんだよっ。大事な商品食わしてやった上にビールとか、どんなおもてなしだ。酒が飲みたきゃあかねに行ってこいっ」
あかねとはあけぼの人情商店街にある『スナックあかね』のことで、オネェのママが営むノーマルなスナック……という不思議な店だ。
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