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「そそ、ガラスは俺が明日、猫田 の親父に話しとくから。俺んちは酒屋なんだけど、はす向かいがガラス屋だから、任しときな。あ、ちなみに俺は吉岡 巧。イチとはゆりかごから一緒の幼なじみ」
ふたりの言葉に、顔をあげた若者は「津村日向 」と名乗った。
「へぇー、ヒナちゃんか。生まれたてみたいに綺麗な顔してっからぴったりだな。な、イチ?」
「お前はもっかい生まれなおしたほうがいい顔だからな、タク」
「ちょっと聞いた? さすが中高年のオナペットは発言が上からだね。上からイチヤだね」
「だからオナペット言うなっ」
脱線しながら延々と続きそうな幼なじみトークに、突っ込みを入れるようなタイミングで巧のスマホが鳴り出した。
「うわ、ヤバッ」
背を向けながら電話に出た巧は、しきりに謝りながら体を縮こめている。
「たぶん嫁さんから」
日向にニヤリと笑って見せると逸也は調理場に降りて、惣菜をいくつかパックに詰めた。
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