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「イチさん、洗いもの終わりました」
日向の声に我に返ると、逸也は調理場へ振り向いた。
「おう、サンキュー。昼めし、遅くなっちゃったな。店のもんで悪いけど、何でも好きなもん持って上がってろ」
昨夜。日向の事情をきいて思わず同情してしまった逸也だったが。
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逸也の思った通り、日向が倒れた原因は栄養不足による貧血だった。
高校卒業後、日向は洋食屋でコック見習いをしていたが、事情があって辞めざるを得なくなり寮を出ることになった。すぐに仕事は見つからず、ネカフェで過ごすうちに手元の金も尽きてきた。どうしようかと途方にくれながら、たどり着いたのがあけぼの人情商店街だったと。
「お腹がすいてて寒くて。ああ俺このまま死ぬのかなぁって本気で思ってました。そしたらおでんのいい匂いがして。ちょっとだけ覗こうとしたら目の前がふわーって暗くなって。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありません」
家出少年ではないことが判明したわけだが、二十歳の若さでホームレスって。ここは日本だろ。
「お前さ、実家は?」
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