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ついてこい、と告げて逸也は座敷の奥の引き戸を開けた。慌てて立ち上がるも慣れない正座に足がしびれてよろける日向にゲラゲラ笑って、「ここがトイレでこっちが風呂場」と一階の水回りを教えながら狭い階段を上る。
上った先は台所兼居間になっていて、それを挟んで東と西にひと部屋ずつ。東側は両親が使っていた部屋だが、たまに風を通して掃除はしているからすぐに使える。
「布団もときどき干してるから大丈夫だ。ほれ」
「あの……」
わけがわからず部屋の入口に突っ立っている日向に向かって枕を投げつけてやる。
「ガラス代なー、体で返してもらうわ」
「えっ?」
枕を抱くよう身を固くした日向に、逸也はまた腹を抱える。
「いま、やらしい想像しただろ? ちげぇよ、バーカ。俺、そっちの気はないから」
「だったら」
「お前、日向さ、コック見習いだったなら包丁使えるだろ? そしたら明日の朝めし作って。冷蔵庫のもん、何でも使っていいからさ」
「え、と……」
「ガラス代金払い終わるまでここにいろ」
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