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主婦たちは夕方の家事の前にひと息つきながらドラマの再放送を見る。子供たちは下校前に帰りの会なんかをしていて、職人は一服、総菜屋はコロリと横になって。そんな時刻。
食べ終えた食器を重ねて「片付けてきます」と日向が二階に上がっていく。階段を上るトントントンという音を、そういえばずいぶんと久しぶりに聞いた気がする。日向が水道を使う音。カチャカチャいう食器。座っていた座布団の窪み。自分以外の誰かの気配に包まれて、逸也は目を閉じた。
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「ふ、わー」
ごろりと寝返りをうってから一瞬間をおいて、逸也は飛び起きた。
「うわ、こんな時間っ」
辺りに夜の幕が降り始めている。トキタ惣菜店が一番忙しくなる時間帯に突入していた。
「日向っ、すまん」
店先では日向が大鍋からおでんを容器によそっている。並んだ客が数名。ああ、やっちまった。
「そちらのお客様、メンチとアジフライ四枚お待ちです」
「はいよっ。お待たせしましたー」
逸也は頭に巻いたタオルをキュッと締めなおして笑顔を作った。
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