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 日向は一瞬戸惑ったのち、のろのろと二階への階段をのぼった。その後ろを逸也がついてくる。置いてある私物からスマートフォンを引っ張り出すと、一呼吸してから電源を入れた。  久しぶりに立ち上がった液晶画面に、開かなかった間にきたお知らせアイコンが一斉に並んでいく様子を、息を詰めて見つめる。何かのアプリの更新やニュース配信といった中に、不在着信が数件入っているのを確認すると眉が曇った。  受話器の形をしたそれをタップする指が少し震えてしまう。が、恐れていた名前は見当たらなかった。着信拒否にしてあるから当たり前だけど、日向の不安はその程度では解消されないほど深刻なものだった。  知らない番号からの着信もなくとりあえずホッとしたのもつかの間、着信名のすべてがもといた店のオーナーからだということに、日向は唇を噛んだ。  簡単な書き置きだけを残し夜逃げのように寮を飛び出した日向に、オーナーはさぞや怒り嘆いているかと思えば胸がつぶれそうになる。

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