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****  その日もトキタ惣菜店は完売御礼の札がでて、閉店後は逸也が作ったテキトー飯で夕飯を済ませ、いつものように日向は後片付けの洗い物をしていた。  逸也は食後の一服を終えると一度自室に入り、すぐに戻ってきたかと思えば妙に神妙な面持ちで日向を呼んだ。 「ちょっとそこ座れ」  ダイニングテーブルの向かい側を指されて、日向は「ついに来たか」と心臓が縮み上がった。時間稼ぎのためノロノロと手を拭いてみてもそんなのなんの足しにもならない間で。腕組みをしている店主の前に腰かけても顔があげられない。  逸也がひとつ咳払いをした。 「日向がここにきて五日経った。で、これな」  うつむいた目の前に茶封筒が差し出され、日向はますますうなだれる。中身はきっとガラス代金の領収書だろう。今朝、開店前に猫田ガラスの親父さんがきて、店のドアは元通りになっていたから。  ガラス代の分、働き終わったということはここを出ていけということだ。

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