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 親しげなふたりの様子に胸がチクチク傷む。イビキがうるさいって、聞いたことあるのかよ。それって。  アヤカはこういう店で働いているだけあって話題も豊富で、特に初めて来店した日向にアレコレ話を振ってくれるので、そのたび愛想笑いを繰り返しているうちに頬の筋肉がつりそうになった。  豊かな胸元は男ならよだれものだろうけど、日向にはまったく興味の持てない無用の部位だし、でも逸也はそういうのに興奮するんだろうなんて考えるといたたまれない。  一時間ほどすると巧が奥さんからの「帰ってこいコール」で泣く泣く腰をあげ、そのタイミングで日向はトイレに立った。  用をすませて出てくると、逸也とアヤカは寄り添うようにしてなにか話し込んでいる。ため息を飲み込んだところであかねママにおしぼりを渡され、そのままカウンターへと腰をおろした。なんとなく戻りづらい。

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