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「気になる?」  あかねの声に驚いて振り向くと、濃いアイラインで縁取られた目元が優しく微笑んでいる。 「イッちゃんはいい男よねぇ」 「な、なんで俺がイチさんを気にしなきゃならないんですかっ」  焦って汗が滲んだ手で、おしぼりを握りしめた。 「蛇の道は蛇、よぉ。ふふっ」  言葉が出ない日向に、「はい、アタシからの奢り」とグラスを差し出された。ビールかと思ったら微かに生姜の風味がして、ほろ苦さの向こうにほんのり甘い味がする。 「シャンディーガフっていうカクテルよ。苦味と甘味の真ん中にピリッとした芯が通ってる……、イッちゃんのイメージ」  口に含んだカクテルを慌てて飲み込む日向にあかねは楽しそうに笑って、逸也との思い出話をしてくれた。  あかねと逸也はは中学時代の先輩後輩で、共に野球部の仲間だった。逸也はチームメイト思いのいい後輩だったが、あかねの卒業後は疎遠になっていたという。

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