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再会したのはあかねがこの町に戻ってきてからで、この店がこんなふうに繁盛するようになったのは逸也が商店街の皆に声をかけてくれたり、寄り合いの二次会に使ってくれたりしたからだそうだ。
「もうね、オープンした頃はお客なんてぜーんぜん来なくてねぇ。ま、こんな不気味なおねぇの店だから仕方ないんだけどねぇ」
あかねは確かにこの町では浮きまくりの濃いキャラだけど、どこかノスタルジックなこの店は居心地がいいし、お通しやつまみの味もいい。食事目当てでやって来る客もいるようで、現にカウンターのサラリーマン風の男は、ナポリタンを旨そうに食べている。
それを素直に口にすれば、あかねは体をくねらせて喜んだ。ちょっと恐い。けど、可愛く見えなくも、ない。
「そうやって言ってもらえるとこの商売始めて良かったぁって思えるわぁ。ほんと、いつやめようかって開店当初は毎日悩んでいたんだもの。だからね、こんなキモ旨い店は珍しいんだから繁盛するまでやめるな、って言ってくれたイッちゃんには足向けて寝られないの」
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