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「キモ旨いって……」   イチさんらしいなぁ、と思う。口は悪いしふざけてるけど、あたたかくて優しい人だ。 「アタシらみたいなマイノリティはなにかと生きづらかったりするけどね、真面目に頑張ってればいいことあるように出来てんのよ。ヒナちゃんの恋だってね」 「俺、別に……」  あかねの話に油断して、逸也をうっとりと見つめてしまっていたことに気がつけば頬が熱くなる。 「なんでも相談しにきなさいよ。こー見えても恋の場数は踏んでるんだからぁ」  ムキムキっと力こぶを作って見せた様子に吹き出すと、あかねも真っ赤に塗られた口角を上げて「ぐふふ」と笑う。アヤカに嫉妬した心が、少しほっこりとほどけた気がした。

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