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「ちょ……、もう恥ずかしいからやめてくださいってば」
「誰も歩いてねぇべ。あったかいからくっついて帰る」
確かに野良猫すらいないほど閑散としてるけど。
「ぼ、防犯カメラに映っちゃうでしょ」
「んなもん、この寂れた商店街に付いてると思うかボケ」
「もーう」
二人羽織状態でようやくトキタにたどり着いた頃には、日向はうっすらと汗をかくほどヘトヘトだった。
「ほらイチさん、水」
定位置のソファにぐったりと沈みこんだ逸也にグラスを手渡すと、口をつけたそばからジャバジャバこぼすからこの酔っぱらいは。
「なにやってんですかっ。全然口に入ってないし、もうっ」
急いで取ってきたタオルを逸也はうるさそうにはらって「いい、脱ぐから」とニットの襟首から頭を抜こうとしてもがいている。
「ひーなーたー、なんかこれ脱げない」
「クソ酔っぱらいめ」
頭と腕を抜いてやると滑らかな筋肉に覆われた上半身が現れて、日向の体温が急激に上がる。
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