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申し訳ないことに、頭爆発すんじゃないかってくらい飲んだ朝でも不思議と胃袋だけは無駄に元気で、なんなら今すぐ背脂チャッチャ系のラーメンでもいけるくらい。
ということはおくびにも出さず、神妙に礼を言ってから逸也はお椀に口をつけた。
「っはー、沁みるぅー」
本当に沁みる味だった。鰹のだしにシンプルな豆腐とネギの組合せが、胃壁から直接体内に染み渡っていく。
「いいね、日本人実感」
続いて白粥を手に取った。叩いた梅が乗っただけのこちらもシンプルなもの。だからこそ丁寧に仕事したことがわかる。
「うまいな」
「その梅干し、勝田さんにもらったものです。鰹節を混ぜて叩いたんですけど」
「あのお喋りおばちゃんな。夕飯はうちの惣菜で手抜きするくせに、こういうもんだけはマメに作ってしかも旨いんだから、中高年って侮れねぇよな」
「トキタ惣菜店は、そんな中高年に支えられてるんですよね」
「あ、オナペットだっけ……」とぼそりと呟き、氷の表情でお粥をすくう日向はいつもの朝より態度が固くて、これはやっぱり夕べ無遠慮に懐きすぎたのが原因なのか。
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